2009年 05月 26日

ダディー

私や多くの若いマジック関係者にとって
手品界のパパである方が、今日未明にお亡くなりになりました。
癌で闘病中でした。
マジシャンとしても人間としても、
これからまだまだ輝きを増していく年齢でした。
残念でなりません。

その方と初めてお会いしたのは、友達に連れられてご自宅に遊びに行ったときでした。
今から8年前の夏でした。
当時、プロマジシャンと全く無縁だった私には、
その方がどんなにすごいマジシャンなのかも知らず、
昼間っからビールをあおっている酒臭い人、という印象が第一でした。

その数週間後、初めてその方のアクトを生で見て、
なんて格好良いんだろう!とベタ惚れしました。
でもステージから降りればやっぱり酒臭くて、
そのギャップがなんとも可笑しかったものです。

私が初めてプロのショーに出たのも、その方が誘ってくれたショーでした。
以来、たくさんのショーやコンベンションでお世話になりました。
FISM2003(オランダ)に出るきっかけも、その方が私を日本予選に推薦してくれたからです。

オランダへ向かう機内では席が隣になり、
あの長身を狭いシートにうずめて、おつまみやらキャンデーやらを
何度もアテンダントさんからもらっては、私に渡してくれました。
海外のホテルにいるとこういうちょっとしたものが恋しくなるんだよ、って。

あんなにいつ何時でもビールを持ち歩いていたのに、
ある時からぱったりとアルコールをやめました。
子供が出来、パパになりました。
子供には自分のことを「ダディー」と呼ばせていると聞き、
私や仲間たちもたまにそう呼ぶようになりました。
女性マジシャン連中で「ダディー!」と声をかけると「娘たちよ」と返してくれました。

ダディーのステージを最後に見たのは、秋田のハタコン、
それまで何度となく見たダディーの演技の中でも、一番格好よく、迫力がありました。
ステージを降りれば、いつもごっちゃり商品をのせたディーラーブースで、
誰にでも懇切丁寧に実演をしていて、
さっきまで超格好良くカードを出していた世界が認めるマジシャンの、
めちゃくちゃ庶民的な姿が微笑ましかったものです。

ダディーとの思い出にはひとつも悪いものがありません。
一年以上会っていないのに、こんなに思い出が鮮やかなのは、
その一つひとつが楽しかったからでしょう。
私はダディーのおかげでたくさんの貴重な経験をし、
仲間と知り合い、多くの時間を共有してきました。
その仲間たちもそれぞれにだんだん境遇が変わり、
なかなか連絡をとることもままならなくなって、
その中でつい一週間ほど前に、ダディーと家族のために何かできることをしよう!
とちいさなコミュニティーを作り上げ、活動方針が出来始めたまさにその夜の訃報でした。
ダディーは最後に、また私達を繋いでくれたみたいです。

昨夜、私は名古屋のマジック仲間の家にいて、
長い時間、ダディーについて話しをしていました。
これも虫の知らせ、でしょうか。

火曜日も1日名古屋にいる予定でしたが、急遽早く東京に戻ることにしました。
何ができるわけでもありません。
ただ、すぐ動けるようにしたかったし、遊んでいる心の余裕なんてありません。

まだ、悲しいとか寂しいとか、感情の持って行き場がわかりません。
昨夜はぼんやりしてあまり眠れませんでした。
今朝になってたくさんの方のお悔やみを見て、泣けてきました。
私がダディーが大好きだったように、
ダディーは本当にたくさんの人に親しまれ、愛されていました。

今朝外に出たら、あまりにも気持ちの良い朝で、
友人が言った、
「ダディーはこんなに気持ち良い朝を迎えることができなかったんだね」
という言葉に切なくなりました。
1日を生き抜くということは、ものすごく大変なこと。
朝目が覚めるということは、感謝すべきこと。
そんなことを思いました。

ダディーへの思いはつきませんが、
気持ちが整理できたらまた書きます。

まずはダディーへ、おつかれさまとありがとうございました、を。
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by pocket-xiao | 2009-05-26 12:34 | 今日ノ出来事


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