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2010年 06月 13日

6月13日シアターコクーン

今年も中村勘三郎座長のコクーン歌舞伎を見に行きました。
出し物は「佐倉義民伝」。
普通に歌舞伎座とかにかかっていたら、どんなに配役が良くても
まず見に行こうとは思わない演目です。
暗くて地味で悲惨な話です。
なので、今年のコクーン歌舞伎の演目が義民伝と聞いた時は
「えー・・・見に行かなくてもいいんじゃないか?」
と思ったくらいです。

「佐倉義民伝」は、江戸時代に実際起こったという
佐倉(現千葉県成田市)藩の苛政を将軍に直訴した名主・惣五郎の
直訴に至るまでの葛藤や親子愛を描いたものです。
惣五郎の直訴は藩政を良くしたものの、
直訴という行為自体への罰として、惣五郎と妻は磔(死刑)、
子供も斬首刑になったという、暗く悲しいお話です。

・・・基本的に、こういう話は好きではないのです。
でもまぁ、見に行きましたよ。
コクーン歌舞伎ですから。
何かを期待して。
で、びっくりしました。
全くスキのない、どこにもムダがない、素晴らしい出来でした。
きっと生涯心に残る芝居だと思います。

勘三郎の、「役への丁寧さ」がものすごくて。
惣五郎という、真面目で正直で誠実な性格を
真面目に正直に誠実に演じてくれました。
いつも悪役や何癖もある人間を演じては光る、「黒」「グレー」な勘三郎が、
「真っ白」「無垢」になっていました。
あぁ、この人はこういう役もぴったりはまるのだなぁ、と。

その女房役の扇雀もまた良くて。
直訴のために江戸に発つ惣五郎が、身内に刑が及ぶことを危惧して
置いていこうとした三行半(離縁状)を
「奈落の底までお供いたします」と突き返した姿が、もう、ねぇ。
夫の行為が妻から見て正しいかとか、間違っているかとかじゃなくて、
夫を心から信じている、「この人に付いていきたい」という一念が愛おしすぎる。
毎年毎年、扇雀は良い役回りをしてくれてます。

そしていつも食事のお供の濃いお茶のような
脇役ながら無くてはならない存在感を放ちまくる笹野高史。
佐倉土着の印旛沼の渡守をとても泥臭く演じていました。
生活苦から佐倉を離れた人や自殺する人に対して
自分の無力さと不器用さを感じながら何もすることができない、
そんなもどかしい郷土愛に満ち溢れた老人でした。

いちいち演出が素敵すぎて、脳ミソがしびれました。
一番は将軍直訴の場面、無音でスローモーションの演出。
歌舞伎の演出手法で言う「だんまり」をもっと心象風景っぽくした感じ。

道端で土下座する惣五郎。
ゆっくりと進む将軍の行列。
惣五郎に気がついて警戒する行列の警備。
「上」と書かれた訴状を手にする惣五郎。
惣五郎を乱暴に押さえつけ、訴状を奪い取る警備。
訴状が役人の手を経て、将軍へ渡される。
その間、訴えを聞いてもらおうと懇願する惣五郎。

この一連の出来事を、白をかなり強くした照明の下、無音&スローモーション。
印象に残りました。
惣五郎のその時の脳内記憶を映し出しているようでした。

話の最後あたり、磔にされた惣五郎の目の前で
3人の子供たちが役人たちに殺される場面は壮絶でした。
そこまで場面として設けるとは思ってなかったので、驚きました。
死罪を前に念仏を唱える長男に対し
「念仏など唱えるでない!
成仏せずに祟ろうぞ!祟ってやろうぞ!」
という惣五郎。正直に生きてきた人が裏切られたことに対する最高の怒りの表現。
(祟る相手は佐倉藩の藩主。史実はどうか知らないけど、
お芝居上は惣五郎の祟りによっていずれ佐倉藩は改易になるらしい)
そして最後は惣五郎が死罪になって、暗転。

こういう悲惨な場面で終わらせないでくれるのが、コクーン歌舞伎。
「・・・と、こういう芝居が流行りましてね」
という感じで最後はわいわい、大団円っぽくなる。
ありがたい。助かる。
こういうのがないと、気持ちよく拍手して終われない。
5回ぐらいのカーテンコールの後、終演。
最後のほうはスタンディングオーベーションでした。

うむ。大満足。
「最近いろいろ見るけどいまいちでね」
みたいな発言を1カ月ほど前してましたが、
このお芝居は、歴代5本の指に入るくらいの満足度合いでした。
で、勢いで来月の赤坂歌舞伎のチケットを取ってしまいました。
今度も中村座、演目は「文七元結」というこれまたあまり好きではない・・・。
もともと落語の演目で、とても良い話なのですが、
あまりにもよく出来すぎている人情話ゆえ、
もっと年取ってからじっくり聞こう、と思っているのです。
それでも、中村勘三郎がやるなら、きっと面白いはずです。

それにしても、中村勘三郎はすごいお人だなァ。
惚れ惚れしますなァ。
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by pocket-xiao | 2010-06-13 23:50 | 今日ノ出来事


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