2010年 07月 23日

若いが良いわけじゃない

旅行に行く前日、赤坂大歌舞伎を見に行ってました。
赤坂ACTシアター。
中村勘三郎「文七元結」。

もともと文七は落語の人情噺というジャンルの人気演目。

 ボロ長屋に住む左官の長兵衛は酒と博打で金を使い果たし、
 借金を重ねて、年が越せないありさま。
 夫婦喧嘩も絶えず、耐えかねた娘のお久が家を飛び出し、
 吉原の女郎屋に身を売って金を作り、家の困窮を助けようとする。
 事情を聞いた女郎屋の女将が長兵衛を呼び出し、
 「50両貸してあげるから、酒も博打もやめて仕事に精を出し、
 来年の大晦日までに50両返しにおいで。
 それまでは娘には私の身の回りの世話をしてもらうけど、
 万が一約束を破ってお金を返しに来なかったら、
 娘には客を取らせるから、そのつもりでしっかり働くんだよ」
 と、50両を長兵衛に渡す。

この女将さんという人は、たぶんすごく優しいのだけど、
情だけじゃない、というのが印象的。
情は厚い、でも、その裏切りに対してはけじめをつける。
女将さんのセリフに
「50両約束の日までに返しに来なかったら、娘に客を取らせるつもりだよ。
どんな病気を引き受けるかもしれない、命を落とすかもしれない。
あんた、それでもいいのかい」
というのがある。
冷酷だとも思うけど、たぶんこれがリアルなんだろうな。

 50両を受け取った長兵衛が家路に急ぐ途中、
 橋から身を投げようとしている若い商人に出くわす。
 なだめて話を聞くと、取引先に50両の回収に出かけた帰り道、
 ガラの悪い男に50両をすられたらしい。
 主人に顔向けができないから身を投げて死のうと思うのです、という。
 長兵衛は散々迷った挙句、娘の身売り金50両を若者に投げつけて、家に帰る。

ここでの押し問答の一番の見どころ、聞きどころは
長兵衛の50両のいきさつを聞いた若者が
「そんな事情のあるお金は受け取れません」と言うのに対して
「娘は50両なくても死なねぇが、
てめぇは50両無きゃ死ぬってんだろ!?
だからやるっていってんだよ!」
という件。

 娘の身売り金50両をあかの他人に渡してしまったということで
 長兵衛の家では朝から夫婦喧嘩が始まっている。
 そこに身なりのいい商人と昨晩助けた若者・文七がやってきて、
 昨日すられたと思った50両は、取引先に忘れてきただけだったので、
 親方から頂いた50両を返しに来ました、という。
 さらに、吉原からお久を身請けし、綺麗に着飾らせて連れてきた。
 そしてさらに、お久と文七を夫婦にして、
 これからも親戚同様のお付き合いをしたいという申し出。
 文七とお久は元結(ちょんまげを結ぶこより)のお店を開き、繁盛したそうな。

という万事めでたし、の「文七元結」。
勘三郎は、基本「しょーもない親父」を演じてたわけだけど、
とてもかわいい親父だった。
わがままで、喧嘩っ早い親父だけど、人懐っこい。

勘三郎が立川談志が好きなことがあってか、
人物像やセリフや心理描写など、私の好きな談志の文七元結を踏襲していた。
とても良い芝居だった。

文七の後は、勘三郎・二男の七之助の舞踊「鷺娘」だった。
引き抜きが何度もあって、踊りのバリエーションも多くて、
結構面白い踊りなのだけど、
七之助の若さゆえか、恋する女の狂おしさみたいなのが足りなくて、
あまり見応えはなかった。

40歳以上の女形が踊る鷺娘はかわいらしさや色っぽさがあって良いものです。
役者は若いから良いってもんじゃない。
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by pocket-xiao | 2010-07-23 01:53 | いとし、しほらし、かはいらし


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