2011年 07月 03日

読書感想文

友人から江國香織の「神様のボート」を借りた。
「登場人物が少なくて、さらっと読める小説」とリクエストしたら、
これを貸してくれた。
いかんせん、登場人物を覚えられないもので、
登場人物が多い小説(特に仮名名前ばかりの海外物)は苦手なのだ。。。

  そもそも、本をほとんど読まないもので(文学部だったくせに)、
  でも、嫌いではないのです。読むのもそこそこ早いと思うし。
  単純に「本を選べない人」なのです。
  本屋さんに長時間いられない人。いたたまれなくなる人。
  最近は建築とか旅行とか、当たり障りのなく、
  ビジュアルで楽しめる本をちょいちょいつまむようになったので、
  大きな本屋さんに行けば結構時間がつぶせるようにはなってきた。

「登場人物が少なくて、さらっと読める小説」というリクエストにぴったり。
登場人物はほぼ2人で、あとは「出てこない主人公」が1人。
母娘の10年間ぐらいの日常を、2人が交互に、それぞれの視点で綴るというもので、
出てこない主人公と言うのは、そのファミリーの父親のこと。
父親は何らかの理由で「必ず戻るから」と言い残して母娘の前から姿を消し、
母は父の言葉を信じて、転居を続けながらひたすら待っている。
転居を続けるのは「あの人(父)が居ない場所に馴染むわけにはいかない」からだという。
一緒に転居を続けていた娘は中学生になると、
周囲との関係を築くことに目覚め、母娘には少しずつ距離が生まれはじめる。
「ごめんなさい、ママと同じ世界に生きていられなくて」。
そして娘は高校に入ると同時に母のもとから離れ、
母の生活や心が徐々にすさんでいき、でも父が自分を見つけてくれるのをずっと待っている。

エンドは、2人(父母)が再会したような内容なのだけど、
それまでの緻密な(という言葉が正しいかわからないけど、一応「緻密」としてみる)
文章とは違って、いやに大雑把に書いてあるので、
本当に再開したのか、母親の妄想で終わったのか、よくわからない。
急激にぼんやりと終わっている。
たぶんこの話は、最後に会えようが、会えずに終わろうが、もうどうでもいいんだと思う。
一人の男性(2人にとっては立場は違えどとても大事な存在)を主題にして、
その男性に心を囚われた大人の女性とその娘が、
同じ時間軸で「変わらない」と「変わっていく」姿の物語だから、
結末、は無くてもいいのかも、と思った。

ネットで感想を見てみたけど、単純にハッピーエンドと読み取った人が多くて、
母親の夢、や、死んで再開という読み取り方、いろいろあるみたい。
まぁ、どれでもいいんじゃないかと。
結構「身勝手な母親に振り回された娘がかわいそう!」
「母親の行動に憤慨。自分の思い出に娘まで巻き込むなんて。」という意見が多かった。
そうは思わなかったな。まぁ普通に考えれば、そうなのか。
確かに身勝手だけど、娘は小さい頃は転居を楽しんでいたようだし、
成長してからは「転居しなくない、この街にいたい」と母に訴えたし、
最後には母のもとを離れて暮らし始めたわけだし、別にかわいそうじゃない。
ひもじい思いをしたわけでもないし。

私はむしろ、こうやってひたすら、一つのことを信じて、
それだけにすがって生きていられる女の強さってすごいな、と思った。
私は小説や映画に詳しくないので、落語と歌舞伎ぐらいしか例えるものが無いのだけど、
歌舞伎にはよく、「お家のためにわが子に手をかける」母親が出てくるけど、
そういう女性に向ける思いと同じような感情を持った。
「子供が巻き込まれてかわいそう」と思うのではなく、
「子供を手にかけなければならない親の心情」を考える。
それは何かの大義名分に向けられた強い思いが勝っているからであって、
それが「お家」「殿様」なのか、それとも「帰らない夫」なのかの違いくらいなもの。
ストーカーではない一途な女は嫌いじゃない。

江國香織の作品を他に読んでいないので、一概に分からないけど、
綺麗で簡潔な言葉が並べられていて、読みやすいし、好感度が高い。
(難しい言葉が難しく並べられていると、紙面を見ただけで
「うわ、この文章読みたくない」って思う。そういう直観は昔からあるのね。)
良い作品でした。さすが、ナイスチョイス。

にしても。
読書感想文って難しい。
[PR]

by pocket-xiao | 2011-07-03 01:15 | いとし、しほらし、かはいらし


<< 「それは偽物だ!」      あ。半分が。 >>