2011年 07月 14日

「寝床」

この前寄席で聞いて、改めて不思議な噺だと思った。
落語聞き始めの頃は、そんなに好きではなかったかなぁ。
前は面白いと思ったことが無かったのだけど、
最近になって、なんて面白いんだろうと思うようになった。
で、ふと「不思議な噺だよなぁ」って。

あらすじ。
  義太夫語りが好きな商家の旦那。ただし、これが下手のさらに下を行く腕前。
  今夜、義太夫の会を催すということで旦那は準備万端。
  番頭は商家の者や、旦那が大家を務める長屋の店子たちに声をかけに行くが、
  みんな聞きたくないのは番頭も承知、
  番頭はいろんな言い訳を考えて、「というわけで、今日は誰も来ないんでございます」。
  これを聞いた旦那は怒り心頭、
  「自分の義太夫を聞く気が無いのなら、みんな辞めちまえ!長屋からも出て行ってもらう!」
  それじゃあかなわないというので、みんな渋々義太夫を聞きに来る。
  やけ酒を飲んでいるうちに、こぞって寝てしまい、
  それに気づき、静かに聞き入っていると信じ込んでいた旦那はまた激怒。
  そこにひとり、シクシクと泣く小僧。
  「おぉ、お前は義太夫に感動して泣いていたのか。感心な子だ。どの場面だ?」
  「あそこでございます」
  「ん?さっきまで私が座っていた場所を指して・・・何で泣くのだ?」
  「あそこがあたくしの寝床でございます」

オチはそんなに好きじゃないけど。。。

この噺の何が不思議かと言うと、
「旦那の下手な義太夫」というのが、噺の中に実際には出てこないということ。
とくかく徹頭徹尾、「旦那の義太夫は下手くそ」という印象だけ与え、
あとは聞き手の想像力に委ねるという、実は結構特殊な演出。

  「ひどいねありゃ。義太夫語ってるんじゃないよ、
  絞め殺ろされた人の怨霊か何かがのり移った叫び声だね」
  「前の義太夫の会で、耳聞こえないバアさんを盾にして、一番前に座らせたんだけどよ、
  何の因果か聞こえちゃったんだね。それ以来バアさん寝たきりだよ」
  「体起こして聞いちゃだめだよー!声が胸に当たりでもしたら死んじまうよ!」

こんな感じの”悪口”がひたすら続く。
実際「ヘタな義太夫」なんて聞いたことのある人、ほとんどいないだろうに、
この落語聞いてると、そのヘタな義太夫を想像して笑えちゃうからすごい。

なんかね、この噺は、その噺を演じている落語家の後ろに、
やたらリアルに光景を想像できるのですよ。
番頭さんが旦那の前で言い訳に困っている姿とか、
結局集められた長屋の住人が
「旦那は良い人なんだけど、義太夫だけが良くない」とぼやき合う姿とか、
旦那が大汗かきながら、唾飛ばしながら義太夫を語る姿とか、
やけくそな観客の姿とか。
自分もその義太夫の会に巻き込まれているような錯覚に陥る。

うん、この噺は深い。
面白い。
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by pocket-xiao | 2011-07-14 00:25 | 雑言タハゴト


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