2004年 09月 19日

梨園シリーズ2:市川猿之助

何年か前に女性ファンによるストーカー問題で
ワイドショーでもちょっと話題になりましたね・・・。そう、その人。
ここでは一門の通称である「旦那」と呼ぶことに、勝手に、しましょう。

旦那の芝居の一番の魅力は「死に際」にあります。
6年前に見た「義経千本桜」の平知盛の死に際がいまだに忘れられないのです。
 「千本桜」は源平合戦のその後を描いた芝居。
 平家の残党平知盛は源義経に復讐をしかけますが、
 合戦の末、岩場から海に落ちて死んでしまいます。
 
 白塗りの顔、ざんばら髪、血に染まった装束・・・。
 知盛は、船の碇がついた綱を体に巻きつけ、
 碇を担ぎ上げると、海中に投げ落とします。
 碇が沈むに連れて、海に引き込まれて少なくなる綱。
 綱が無くなった次の瞬間、知盛は仰向けに海に落ちるのです。
 壮絶な「死」の瞬間です。

それまでいろんなドラマや、映画や、芝居で、もちろん歌舞伎でも
たくさんの「死」のシーンを見てきました。 
でも「死に逝く者」の気持ちが見えたことはありませんでした。
・・・この時は、自分ナリに、それが見えた気がしました・・・。
碇を投げた時点で、自分の死は確定しています。
綱が少なくなっていく、その何秒かの「間」。
悔しさや、悲しさや、憎しみや、恐怖や
もしかしたら戦いを終えられることの安堵も。
周りには、恐ろしいくらいの、緊張感。
爆発しそうな思いを抱えて、知盛は自らの死を待っていました。

頭がくらくらするような、そんな感覚に襲われたことを覚えています。
(これも後日別の役者で見たのですが・・・、・・・・・・ネェ・・・・。)
これ以来、旦那の芝居を欠かさず見るようになりました。

旦那の芝居には「心」があって・・・。
一部分だけじゃなくて、全部、どこを切り取っても、何の役でも。
はっきりいって、旦那は、顔貌が特段いいわけでも、
声がいいわけでも、台詞まわしが上手!でもないと思う(失礼容赦!)。
でも、圧倒的な存在感と、なによりもその心は
どんな役者も敵わないと、敵うはずがないと、
ワタシ的には、そう、思って止まない。
だから、見ていたい。ずっと見ていたい。と思う。

「死に際」ついでにモウヒトツ。
旦那のライフワークであるスーパー歌舞伎の内の一作品。
「三国志Ⅱ・諸葛孔明篇」での、旦那が演じる孔明の死に際。
 戦のために離れ離れになった恋人からもらった桃の花びら。
 花びらをじっと見つめ、恋人の名前を懐かしく呼ぶ。
 そして花びらを握り締めた手を胸に当てて、目を閉じて・・・
 腕の力が抜け、手の力が抜け指の力が抜け、
 花びらが掌から、ひらひら、ひらひら・・・最後の1枚・・・。

人の死を、花びらが落ちることに例えた、でもとってもリアルな描き方。

私が花びら1枚に込める思いは、ここからも来てるんだと思って頂きたく候。b0024051_2272695.jpg
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by pocket-xiao | 2004-09-19 00:44 | いとし、しほらし、かはいらし


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